東京地方裁判所 昭和46年(借チ)1039号 決定
〔主文〕1 申立人が別紙目録(二)記載の建物に次の増改築を施すことを許可する。
(一) 母屋部分(別紙図面参照)全部を木造平屋建居宅床面積二〇坪(平面図は別紙図面のとおり)に改築する。
(二) 離れ部分(別紙図面参照)に、別紙図面の如く、玄関、便所、物入、浴室等四坪及び子供室二坪二合五勺を増築し、玄関を物入及び通路に改築する。
2 申立人は、相手方に対し、金四五万円の支払をせよ。
3 別紙目録(一)記載の土地に関する申立人相手方間の賃貸借契約の賃料を本裁判確定の日の属する月の翌月分から一ケ月六、七二〇円(坪当り八〇円)に改める。
〔理由〕(申立の要旨)
申立人は、相手方から別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という)を木造建物所有の目的で賃借中にして、同地上に所有する別紙目録(二)記載の建物(以下本件建物という)に主文第一項記載の如き増改築を施したいが、相手方の承諾が得られないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。
(決定理由)
1 本件の資料によると、申立人は、相手方から昭和八年六月一日本件土地を普通建物所有の目的、期間三年の約で賃借して同地上に本件建物を所有し、右期間満了後も引き続き本件土地を使用し、賃料は昭和四五年四月一日一ケ月三、三六〇円(坪当り四〇円)に改められ、現在にいたり、この間相手方から土地使用につき異議も述べられず、また借地契約に関し賃料の改定以外なんらの取り決めもなされなかつたことが認められる。残存期間の点につき、申立人は昭和五八年六月一日までといい、相手方は昭和四八年五月三一日までというので、当裁判所の見解を示す。本件土地は寺有地ではあるが、右の如き短期賃貸借は管理行為として有効であり、期間は約定期間満了後は定めなきものとなる。ところで、本件土地は昭和一四年一二月二八日から借地法の適用を見るにいたつたので、民法六〇二条の関係で借地法一七条第二項にいう二〇年は寺有地については五年と解するのが相当であり、そうすると、本件借地契約は、当初の約定期間が満了した後は五年毎に更新されたものと看做され、かような経過を辿つて昭和二〇年一二月二八日宗教法人法の施行を見るにいたつた。本件の資料によると、本件土地は境外地であることが認められ、宗教法人令は境内地と境外地を異別に扱わなかつたが、宗教法人法は境内地についてのみ特別に規制し、境外地については特別に規制することを廃めたので、本件借地契約は当初の期間満了の翌日である昭和一一年六月一日以降は前記のように五年毎に更新されたものとみなされ、宗教法人法施行後は借地法の規定が全面的に適用されることになつた結果昭和二六年六月一日に法定更新された後の期間は二〇年となり、昭和四六年五月三一日期間が満了し、翌日法定更新され、残存期間は昭和六六年五月三一日までとなる。
本件の資料によると、本件借地契約には借地上の建物を増改築するには賃貸人の承諾を得ることを要する旨の特約があり、本件増改築は土地の通常の利用上相当であると認められるので、本件申立は、これを認容すべきである。
2 附随処分
借地法は、増改築を許可するにあたり当事者間の利益の衝平を図るため必要があるときは財産上の給付等の附随処分をを命ずることができるとしているが、この附随処分は、増改築にともなう土地の使用収益の内容の変化に注目して考慮するのが相当であると解すべく、本件増改築により申立人の住の快適性は増加することになるので、申立人に財産上の給付を命ずるのが相当であり、本件の場合離れのうち一一坪は今回の増改築から除外されているが、この部分もいずれは増改築することになるので、給付額は、従来の裁判例に徴し、右の如き増改築の規模を考慮し、鑑定委員会の評価した本件土地の更地価格(坪当り二五万円)の三%に増改築にかかる部分二七坪二合五勺を乗じ、それを増改築後の建物の全床面積(二七坪二合五勺プラス一一坪)で除した四五万円(万円未満四捨五入)を相当とし、地代を鑑定委員会の意見、同意見に対する申立人の意見を参考とし一ケ月六、七二〇円(坪当り八〇円)に改める。
(小山俊彦)
目録
(一) 東京都杉並区宮前三丁目五六七番一四
宅地 六二五坪三合三勺のうち八四坪
(二) 右地上所在
家屋番号 一九九番
木造瓦葺平家建居宅
床面積 登記簿上 一六坪七合一勺
現況 三一坪六合二勺
図面(略)